プレイヤーサポート
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新しい働き方におけるゲームサービスの進化
昨今の世界的な出来事により、ゲーム業界もそのあり方が問われています。成功のためには、サービス会社もより身軽になれるよう進化していくことを求められますが、それは簡単なことではありません。
最新のGameQuality Forumでは、グローバルプレイヤーサポート担当シニアディレクターのNeil Long、プレイヤーコミュニティ担当グローバルヘッドのNee Nguyen、ローカライズ担当ディレクターのVictor Alonso Lionがこのテーマを取り上げ、人と技術を組み合わせることで、複数の場所と言語で高品質なサービスを効率的に提供するPTWの取り組みについて、それぞれの見解を披露しました。
変化し続ける業界で生き残るためには、適応力が重要となります。組織は、勝利の戦略を決定する際に多くの要因を考慮しなければなりません。優れたサービスを提供し続けるためには何が必要か? どの納品モデルを破棄し、どのモデルを採用または適応させるべきか? 技術トレンドは何か? その強みと弱みをどう評価するか? 流動的に移り変わる将来に対して、どう準備するか? 詩人で劇作家のJessica Hagedornの言葉に、「生き残りのシンプルな秘訣とは適応力だ」というものがあります。ですが、PTWのように大規模かつグローバルなビジネスでは、それをどうすれば実現できるでしょうか?
最も重要な意思決定要素は常にコストです。多くの企業にとって、納品スケジュールやリリース後のサポートに影響するコストは、リリーススケジュールを計画する際の最重要項目となります。また、コストはもうひとつの重要な意思決定要素である柔軟性に直結します。スタジオやパブリッシャーの規模に関係なく、財務上の問題がある場合は進化する市場の状況に適切に対応できるよう、慎重に立てた計画を変更できるようにしなければなりません。
人材、および人材の可用性という2要素も、開発スケジュールを大きく変える可能性があります。開発スケジュールの短縮のためにスタジオの規模拡張が必要になることもありますが、その際に必要な人材が確保できなければ計画通りにはいきません。また、プレイヤーの期待値と市場の不確実性にも関連しています。どんなに市場調査をしたとしても、ゲームプレイヤーの求めるものを100%確実に知ることはできません。ソーシャルメディアには、様々なタイトルの好き嫌いについて意見が溢れていますが、そこからゲームスタジオの確固たる方向性を決める意味を見出すのは極めて困難なことです。
最後に、テクノロジーと組織的知識という関連する要素を考慮する必要があります。この2つの要素は相互に作用し、途切れることなく情報を提供します。開発スタジオは、トレンドを把握する能力を常に刷新し、チームの技術センスを最新に保てる能力を確保することが欠かせません。
従来環境では仕事は常にオフィスで行われてきました。しかし、世界的な新型コロナウイルスのまん延により、この標準業務は抜本的な構造改革を迫られ、企業は適応もしくは業務の停止を余儀なくされました。すでにデジタルで事業を展開している企業にとっては、従業員がノートPCを自宅に持ち帰って仕事をすることで在宅勤務モデルへの転換は比較的容易です。オフィスにいる従業員のサポートコストは軽減されますが、IT部門ではセキュリティとサポートの指針を再構築する必要があり、それ自体にもコストがかかります。
この在宅勤務モデルは時間とともにどこからでも仕事が可能なものへと進化し、家庭環境を仕事用に調整できない人、仕事で出張をする人にとっても利便性が高くなりました。その結果、労力のモバイル化が進んだことでIT担当の負担が増え、アクセス方法の限定化が必要な状況になりましたが、ビジネスのスピードを落とさずに済むことができました。
自由な発想での実験期間を経て、私たちはハイブリッド納品モデルという安定した方法にたどり着きました。これは、コアチームがスタジオと自宅で業務にあたり、フリーランサーからなるセカンドチームが場所を選ばず活動するというものです。これにより、必要に応じてスタッフの増減が可能になり、より多くの人材にアクセスできるようになりました。
これらのモデルが可能になったのは、すべてを実現するクラウドベース技術と、作業を実行する熟練した従業員の力です。チームは機械翻訳ツールや慎重に適用された自動化技術を用いて、既存のスキルを補強しながら作業を行います。仮想ワークスペースでは、目的を達成するために物理的な場所を必要としないため、より多くの人々と関わりを持つことができます。
ですが、セキュリティが問題になりつづけることに変わりはありません。オンプレミスの場合、ISO認証取得のハードウェアは厳重に管理され、社外に持ち出されることはなく、クライアント独自のツールで規制を遵守しています。一方、クラウドのセキュリティは進化を続け、強力なファイアウォールや暗号化、ホワイトリストされたIPアドレスやVPNの使用など、あらゆる手段を用いています。従業員の側では、安全なデバイスとクラウドリポジトリで可能な限り保護し、アセットへのアクセス権は知る必要があるときだけ付与されます。
ゲーム業界におけるサービスの複雑さは、今後さらに量的にも質的にも増していくでしょう。サポート面では、マルチプラットフォーム化、24時間365日のオンデマンド化、リアルタイム化が進んでおり、それに伴い人材の確保も難しくなっています。また、必要に応じて拡張・縮小する必要があり、PC、コンソール、モバイルと幅広いプラットフォームに対応したハードウェアや設備の管理がIT部門に求められています。
ビデオゲームがこれまで以上に多くの地域で文化的に浸透していく中、サービス規模の適応も重要な要素となります。ある国/地域向けのゲームを別の国向けへカルチャライズする際には自動化できない手間と時間がかかり、現地のノウハウと繊細なタッチが求められます。より多くの人々にゲームを届けられることは、大きなチャンスであると同時に、大きな責任でもあるのです。
ここ数年、ゲームサービス業界は激動の時代を迎えていますが、これからの時代も、まだ想像もつかないような新しい問題が出てくることは容易に想像できます。あらゆるビジネスが成功し、生き残るためには、柔軟な対応力がキーワードになります。テクノロジーでビジネスの障害が増減することもありますが、テクノロジーだけでは不完全です。思いやりのあるチームメンバーの心がなければ解決に導ける問題はありません。